タフらいと誕生物語【第1章】(1)

やったー、できましたよ!!

プロローグ

『やったー!!できましたよ。見てください、黒い縞々が消えています。

できましたよ。できましたよ。完成です。』

 私は、興奮のあまり大きな声で叫んだ。

 その大きな声は、人影のない、冷え切った薄暗い実験室の中でこだました。

 そしてそれは、LEDを半永久的に光らせることができるかもしれない夢の技術、『電解コンデンサーレス・テクノロジー』が生まれた瞬間であり、私がこれから歩
む、人生をかけた戦いの幕開けでもあった。

 もちろん、その時はそんなことは、これっぽっちも考える事なく、ただただ、こ
の世紀の発明に心を躍らせていた。

 2011年2月、私は、中国広東省の薄暗い実験室の中にいた。

外は、亜熱帯地域に属する広東省では珍しく、しんしんと雪が降っていた。1年の
内11ヶ月の気温は30度を超える、中国南部のこの地域では、建物には防寒対策
は何一つなく、建物全体が雪の冷たさと同化していた。

あたかも大型冷蔵庫の中にいるような冷気の中で、私達は、手入れもろくにされて
いない、骨董品のような古ぼけた計測器が数個並んでいる4畳半ほどの小さな実験
室の中にいた。

 私の目の前には、過去、たった一人の開発で世界の8割を握るなどの数々の伝説を作った、天才技術者の北島がいた。彼は、その古ぼけている上に、中国語表示さ
れていて、本当に理解できているのかすら不思議な設備の前で、何度も何度も繰り
返し実験を重ねていた。